「なんで?」を、 とにかく気にすること。
滝澤さんインタビュー #1
2023.3.28
#滝澤祐一
#インタビュー
#野球と休憩
#アスレチックトレーナー
いろいろな専門家に話を聞きながら、 休憩について研究していくシリーズの第2弾。 今回はなんと! メジャーリーグでアスレチックトレーナーをしている滝澤祐一さん! 野球と休憩にもふかい関係があるのだとか。 全3回。 ぜひおたのしみください~。
リード文 QKさん
QKさん
滝澤さん、本日はよろしくお願いします。
滝澤さん
お願いします。
QKさん
まずはじめに…、アスレチックトレーナーってどんなお仕事なのでしょうか。
滝澤さん
アメリカでも日本でも同じ用語を使っていると思うのですが、スポーツの世界以外でもいまでは介護施設など、いろんなところで活躍している職業です。代表的な仕事内容としては、4つあります。「ケガの評価」をすること、「リハビリの処方」、「練習、試合中での応急処置」、そして、スポーツには怪我がつきものなのですが、そのケガを最小限に抑えられるように「エクササイズを処方」すること。この4つです。選手が少しでも長くフィールドでプレーし続けられるように。そのためのサポートをしています。
滝澤さんが所属するレンジャーズのアリゾナ州スプリングトレーニング施設にて
QKさん
ぼくらがよく目にする試合以外の見えない部分なので、その点についていろいろお話を聞けたらと思います。
滝澤さん
とはいえ、実は正解がない職業で、チームによって全然やり方が違ったりするので、あくまで僕の場合のお話になります。
QKさん
なるほど。では、早速質問なのですが、まずは…、日本とアメリカの練習方法や休み方に対して、意識や行動の違いで感じるものはありますか?
滝澤さん
プロ野球となると日本の現場はわからないのですが、自分も高校まで野球をやっていました。その経験と比べると、日本は綿密にスケジュールを組んで、土日も休みなく、とにかく練習をする。
QKさん
たしかに…。高校の部活のマンガとかでも、そういう描かれ方が多い気がしますね。
滝澤さん
ですよね。だけど、アメリカは高校も大学もプロ野球であっても非常に効率的に練習をします。今日はこういう練習、明日はこういう練習とステップアップしていき、無駄なことをしません。でも、日本は全部やっちゃう。この「効率の差」は、とにかく感じますね。
QKさん
なぜ高校の段階から、効率的なことができるのでしょうか。うらやましいです…。
滝澤さん
想像ですけど、そもそもアメリカ人が「非効率なことをしたくない」という気質があって、そういう国民性が大前提にあるのかなと思います。目的がわからないことはせずに、効率的にうまくなりたいのかなと。
QKさん
「自分がやっていることに意味を感じたい」と思ってしまうということでしょうか?日本だと「考えるな、やれ!」根性といいますか。「やることに意味がある」と感じてしまうといいますか。そこは大きな違いですね。
滝澤さん
アメリカは練習中でもとにかく説明していますね。時間にしても「なんでこの時間から始めるのか」の説明もしっかりする。「ずっと走る」みたいなことは絶対になくて、練習ひとつひとつに「なぜやっているか」がわかるようにはしています。
(左)メジャーリーグのロッカールーム(右)テキサスレンジャーズ傘下のチームユニフォーム
QKさん
休み方に対しても、この意識の違いがとても大きく影響していそうだなと思うので、もう少し練習について詳しく聞いても良いでしょうか。
滝澤さん
練習方法では、日本はやっぱりなんでもマルチにやりすぎちゃっているのかもしれません。 アメリカでは、ピッチャーはピッチャーの練習。バッターの練習につき合う必要がない。それは投げるのが仕事だから。チームがまだ練習していても、自分の練習が終わったら先に帰る。日本だと、若い段階の話でいえば一人がなんでもやりすぎなのかなと。
QKさん
なるほど〜。でもそういうのをお聞きすると、投打で大活躍する大谷選手が生まれたりする可能性を秘めているのは、日本の方なのかなって思ってしまったりもしますね…、異例中の異例だとは思いつつ。サッカーとかでも海外へ移籍すると、日本人はどちらかといえば万能選手的な使われ方をしますよね。一方で我の強いストライカーが出てこないといわれるのも、ここら辺に理由がありそうですね。 話を戻しますが、とすると、休み方にも相当理由を求めるのでしょうか?
滝澤さん
そうですね。最適な休み方は人それぞれ違って、まずはそれを見つけるところから始めるのも僕の仕事のひとつではあるのですが、共通しているのは「受動的な休憩はさせない」ということですね。
QKさん
といいますと。
滝澤さん
たとえば、マッサージを受けるだけとか、寝不足だから長く寝る、とか。そうではなくて、自分がアクティブに動いたり、考えたりしてリカバリーさせるように促していますね。前日に7回投げて疲れている投手にでも、動かないって休ませ方は絶対させません。
アメリカにいらっしゃる滝澤さんとリモートインタビュー
QKさん
そこにも理由がある…?
滝澤さん
まったく動かないと血流が滞ってしまって、疲労物質がそこにとどまってしまう。結果、リカバリーに時間がかかってしまうんです。僕の仕事には「傷害予防」という観点があります。例をあげると、ピッチャーはシーズンを通して肩をずっと使っているので、筋力が落ちてくるんです。その筋力を落とさず一定に保てるようにするために、毎日肩のエクササイズを処方しているんです。
QKさん
使うと逆に落ちてしまうんですか!?そのエクササイズというのはどういうものなんでしょうか。
滝澤さん
前日70球投げたとして、次の日もそれなりの負荷をかけて肩を使わせます。一気に休ませるのではなくて、負荷をかけて完全にヘトヘトにさせて、さらに次の日軽いエクササイズをする。メリハリをつけて休憩をとらせることを大切にしています。説明が難しいですが…笑
QKさん
前日がんばったから、今日は1日家で映画を観るぞ!ではダメなんですね笑
滝澤さん
体を動かして生まれた疲労は、体を動かすことでリカバリーしないといけません笑 その時に大切なのが、強度のメリハリですね。
QKさん
練習にしても休憩にしてもなぜやるのか「意味を考える」こと。メリハリをつけること。このふたつに、いい休憩へのものすごいヒントが隠されていそうですね!
滝澤 祐一 プロフィール写真
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MLBテキサスレンジャーズ
アスレチックトレーナー
滝澤 祐一