
明日から使える
いい声の出し方
ちょっと、ひといき展#5
2026.2.5
#呼吸と休憩
#インタビュー
『ちょっと、ひといき展』のレポート第5弾では、
「いい声の出し方」をテーマにしたトークセッションの様子をお届けします!
毎日当たり前のように発している声。
でも、自分が普段どんなふうに声を出しているのか、その声がどんな印象で相手に届いているのか、振り返る機会は意外と少ないかもしれません。
そもそも“いい声”とはどんな声なのでしょうか?
登壇したのは、ボイストレーナーとして活躍する長塚全さん。
そして、音声工学の研究を行う明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 専任教授の森勢将雅さん。
モデレーターは、JT D-LABで声の研究を行う声遊楽プロジェクトの林大輔さんが務めました。
今回は、明日から使える、“いい声”の出し方のヒントをご紹介します。

“いい声”の条件とは?
声は日々のコミュニケーションにおいて欠かせないもの。
だからこそ“いい声”について考えることは、仕事や日常の様々な場面に役立ちます。
セッションではまず、林さんから「“いい声”を考えるには、話し手・声そのもの・聞き手の3つの要素を意識する必要がある」という前置きのもと、こんな問いが投げかけられました。

林さん「プレゼンで説得力がある声、好感を持ってもらえる声など、いろいろな“いい声”がありますよね。
一方で、いつでも誰にでもよく聞こえる声は、実はない気がしています。お二人の視点から“いい声”についてお聞かせください」

長塚さん「プレゼンの場合は、自信のある声や、やさしい声が基本になると思います。明瞭さやちょうどいい声の高さも大切ですね。低すぎると重たく聞こえますし、高すぎると軽くなってしまう。僕自身は、少し声のトーンを上げて話したほうが相手に伝わりやすいんです」
長塚さんは、場面や聞き手に応じて“いい声”を使い分けているとのこと。実際に、自身の声を使い分けながら説明してくれました。
音声工学の研究を行う森勢さんは、“いい声”は地声の高さにはあまり依存しないものであると続けます。

森勢さん「研究では、地声の高さそのものは、その人の印象にあまり影響を与えないことがわかっています。一方で、女性の場合は、コンピューターで声の高さを地声から相対的に少し上げると印象が改善する傾向があります。それから、抑揚をつけたり、フレーズごとに少し間を取ったりすることも効果的ですね。
また、“あー”や“えー”など会話中に出る言い淀みは、全くないよりも、少し入っているほうが印象が良くなるという研究結果があります。無駄なくスラスラと話すよりも、少しばかり言葉に詰まることで人間味が伝わり、かえって好印象につながることもあるんです」
“いい声”は、時代や文化に左右される?
“いい声”だとする評価は、声そのものだけではなく、時代や文化によっても左右されるそう。
長塚さんは、声優や歌手の例を挙げながら説明してくれました。

長塚さん「アニメにおける声優の演技もそうですが、“いい声”の基準は時代や文化によって変わっていくものだと思っています。歌に関しても、昔はマイクから離して張り上げる歌い方が主流でしたが、現在はマイクに近づけて、あまり張らない声の方が、今っぽいと感じられることも多いですよね」
この話に、森勢さんも頷きながら続けます。
森勢さん「おっしゃる通りで、音楽の研究もしていますが、ヒット曲の傾向は時代に合わせて変わります。アニメキャラクターのデザインも時代とともに変化しますよね。それに合った声が求められている側面もあると思います。また、人はこれまでに聞いてきた声と、記憶や感情を結びつけながら声を受け取ります。そう考えると、万人に好かれる“いい声”は存在しないのかもしれません」
“いい声”の感じ方は、育った環境や慣れ親しんだ声、そして時代や文化によって変わるもの。一言で定義するのは難しいようです。
聞き手やシチュエーションに寄り添う
セッションの最後には、来場者から「日常のコミュニケーションで“いい声”を出すにはどうしたらいいか?」という質問が寄せられました。

長塚さん「“いい声”かどうかを決めるのは、話している本人ではなく聞き手です。その人にとってポジティブな刺激があると、その声は“いい声”になる。そのポジティブな感情は何かというと、やさしい、信頼できる、和む…などいろいろあるはずです。相手のことや、その人をどんな感情にさせたいのかから先読みして、その場に合った声を出すことが大切だと思います。修行が必要ですよね(笑)」
林さん「場所や相手によって求められる声は異なるので、やはり一言で“いい声”を定義するのは難しいですね」
長塚さん「そうですね。ポジティブな感情を大切にして声に乗せることが、結果的に“いい声”につながるのだと思います。ただし、いわゆる“悪い声”というものはありません。声は年齢とともに変化していくもの。だからこそ、“いい声”にとらわれすぎないことも大切ですね」
セッションで繰り返し語られていたのは、
シチュエーションや聞き手に寄り添った話し方の大切さ。
自分にとって“いい声”を意識するのではなく、
相手や場面を考えながら話してみる。
そうすることで、自然と“いい声”を出せるようになるのかもしれません。
今回のトークセッションの様子は、
声遊楽プロジェクトのYouTubeチャンネルにてアーカイブ動画として公開されています。
本記事ではご紹介しきれなかったトークテーマや、
“いい声”の出し方についてのより詳しい話もたっぷりと語られているので、
ぜひ、動画もあわせて見てみてくださいね。








