
生き物らしさは
何から生まれる?
ちょっと、ひといき展#6
2026.2.5
#呼吸と休憩
#インタビュー
『ちょっと、ひといき展』のレポートも、いよいよラスト。
今回は、「生き物らしさ」について考えるトークセッションの様子をお届けします!
皆さんは日常の中で、ふとした瞬間に
無生物に対しても「生き物みたい」と感じることはありませんか?
声を聞いただけで人の存在を感じたり、
ロボットやAIになぜか「生きているみたい」「愛着が湧く」と思ったり。
私たちはなぜ、無生物に対しても
「生き物らしさ」や「キャラクター性」を感じてしまうのでしょうか。
登壇したのは、AIキャラクターの社会実装を目指す実業家、
株式会社Pictoria代表取締役CEOの明渡隼人さん。
そして、声における「キャラクター」や「人間らしさ」を探求・発信する
JT D-LAB声遊楽プロジェクトの林大輔さん。

お二人の対話を通して、
私たちがどんな瞬間に「生き物らしさ」を感じているのか、
その正体に迫っていきます。
fufulyにも感じる、生き物らしさ
『ちょっと、ひといき展』でも体験コンテンツが提供されていた、呼吸するクッション「fufuly」。
実際に体験した人たちからは、「猫を抱いているみたい」「子どもが赤ちゃんだった頃を思い出す」など、生き物を連想する声が多く聞かれました。
この反応について、林さんはこんな気づきを共有しました。

林さん「皆さんfufulyを抱えると、『これ』ではなく『この子』と言うんです。こんなふうに、会話のできないクッションから、実際に会話ができるAI VTuber(AITuber)まで、私たちは様々なものに生き物らしさを感じています。今日はそんな生き物らしさについて、いろいろお話しできればと思います。明渡さん、fufulyを触ってみていかがですか?『この子』って呼びたくなりますか?」
明渡さん「しばらく抱いていると、呼吸のリズムが整ってくるのを感じますね。途中からは自分の呼吸と同一化したような感覚もあります(笑)。3カ月くらい使ったら『この子』と呼べる日がくるかもしれません!」
「この子」と呼ぶようになるためには、そのものとの思い出や一緒に過ごした時間が必要だと語ります。確かに、新しく買ったものよりも、長く使ってきたものに愛着が湧くことはよくあります。

明渡さん「大量生産されたものでも、一緒に過ごしてきた時間があれば、かけがえのない存在になる。きっとfufulyを3カ月使って、ある日突然なくなってしまったら、心にぽっかりと穴があくかもしれません。そのときには、もう生き物らしさを感じているのでしょうね」
林さん「見た目や動き以上に、“私との物語”が存在することが大事なのではないかということですよね。生き物らしさを感じるかどうかは、個人的な主観が大きく関わってくると思います」
声は、生き物らしさを強める
「生き物らしい」という感覚は、どこか「人間っぽい」という感覚に近いもの。そして、私たち人間は声を持っています。
では、生き物らしさを感じるうえで、声はどのように影響してくるのでしょうか。
林さん「もともとは生き物らしさを感じていなかったものでも、声を発した瞬間に、一気に生き物らしさやキャラクター性を帯びることがあります。AI VTuberと向き合うなかで、声の存在をどのように捉えていますか?」
この問いに対し、明渡さんは、声の重要性について二つの視点から語りました。

明渡さん「一つは、声は“人の好み”に直結するということです。高い声、太い声、ハスキーな声…好みは本当にさまざまです。VTuberの中でも、一般的な“いい声”が必ずしも人気につながるわけではありません。むしろ、“特徴的な声”のほうが愛されることもあります。声は、そのものの個性として受け取られやすいんです。
二つ目は、声が意思を感じさせる点。音声合成技術の進化により、昔よりもずっと人間っぽく、違和感のない声が生成できるようになっています。そして人間っぽさとは、そのものの意思や欲求を感じられるかどうか。声を通して意思や欲求が伝わると、より強く生き物らしさを感じられるようになると考えています」
生き物らしさとキャラクターの違いとは?
「生き物みたい」と感じることと「キャラクター」と捉えることは、似ているようで少し違います。では、キャラクター性はどんなときに生まれるのでしょうか。
明渡さん「キャラクターは、みんなの共通理解のもとで成立している存在です。みんなで『この子を応援しよう』『この子について語ろう』としたとき、共有できる“記号性”みたいなものが備わっているのがキャラクターなのかなと思います。その場限りではなく、連続した存在だと思わせられるかどうかが、クリエイターの腕の見せどころですね」

林さん「自分一人がそう思うのではなく、周囲とも『この子はこういうキャラクターだよね』と共有されている認識が、キャラクター性を生むうえで重要なんですね」
明渡さん「キャラクターをAIで再現するにあたり、公式設定が不十分なこともあります。その場合、何をもとにキャラクターが形づくられるかというと、実はユーザーの声なんです。意外かもしれませんが、ユーザーの解釈がそのキャラクターの本質に近づいていくこともあります」
こうした「キャラクター性」は、ポップカルチャーの中だけの話ではなくなりつつあります。
トークセッションの最後にはAI時代における「キャラクター性」の重要性について語られました。

林さん「AI時代となり、人間が担う役割が減っていくほど、キャラクター性は今以上に大切な要素になる気がしています」
明渡さん「対話型AIのような人間っぽいと感じられる存在から情報を得たり、コミュニケーションを取ったりすることは、例えば辞書で調べて文字を読んで理解することよりも自然なことだと思っています。今までなかった機械的なものよりも、自然で人間っぽく、信頼を預けられるキャラクター性を持ったもののほうが、より人間の心に深く入り込んでくる。『AIキャラクターに人権は必要か?』といった議論も、そう遠くはない話かもしれません」
声、動き、そして一緒に過ごした記憶。
そんな小さな要素が重なっていくことで、私たちは無生物の中にも「生き物らしさ」や「キャラクター性」を感じているようです。
AIやテクノロジーの進化によって、
無生物が友人や家族のようにそっと寄り添ってくれる存在になる。
そんな未来も、少しずつ近づいているのではないでしょうか。
今回のトークセッションの様子は、
声遊楽プロジェクトのYouTubeチャンネルにてアーカイブ動画として公開されています。
本記事ではご紹介しきれなかったトークテーマや、
“生き物らしさ”についてのより詳しい話もたっぷりと語られているので、
ぜひ、動画もあわせて見てみてくださいね。








