「攻めの休養」で 自分にぴったりな休み方を
片野先生インタビュー #2
2024.12.3
#インタビュー
#片野秀樹
いろいろな専門家に話を聞きながら、 休憩について研究していくシリーズの第6弾。 今回は「休養学」の第一人者で一般社団法人 日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹先生。長年、疲労と休養について研究し、休養の重要性を伝えている片野さんが正しい休み方を教えてくださいます。 全4回の対談、おたのしみください。
リード文 QKさん
QKさん
前回は疲労と休養のために、活力を高めることが大事だと教えていただきました。今回は休養法についてお話を伺いたいです! ちなみに、先生は疲労を感じたら、どんなことをしてるんですか?
片野さん
疲れた時はやっぱりお風呂に浸かります。マッサージも取り入れますね。私は疲労に対して、「どうやったら疲労の解消行動になるか」を考えて、積極的に意識的に取り入れるようにしています。
QKさん
疲労を解消するために、行動すると考えるんですね!
片野さん
その通りです。自分にどんな休養法が合うのか、それを見つけるために、私は本の中で「7つの休養モデル」を提案しています。生理的休養、心理的休養、社会的休養の3つの中の7タイプの休み方を自由に組み合わせることで、疲労回復、休養効果がどんどん高まっていきます。
QKさん
たとえば、どんなことでしょうか?
片野さん
たとえばスープをつくって飲んでみるとしましょう。 スープをつくるということは、「造形・創造タイプ」の休養。スープという体の中を温める食べ物をとることで、やさしく癒してくれるから、もちろん「栄養タイプ」の休養です。さらに、スープをお子さんやご家族と一緒に作って食べれば会話も生まれて、「親交タイプ」の休養に。スープをジャーに入れて公園に持っていき、自然とともに味わえば、森林と触れ合うという「親交」もうまれます。移動により環境が変わるので「転換タイプ」の休養まで加わるんです。公園まで歩けば「運動タイプ」の休養もさらに加わるのです。
QKさん
スープひとつで、こんなにできちゃうんですね!休養行動をどんどん組み合わせていく楽しさがイメージできました。
片野さん
体の中に充電池があると思ってください。朝起きた時から疲れていて、充電が数十パーセントしかなかったら、力を発揮できませんよね。お昼の段階でもうパワーの充電が切れそうだという時は、仲の良い人とおいしい食事をとりに行ってみるとか、休養行動をどんどん増やしてください。休憩所で誰かと話をするだけでも、心のリフレッシュにもなる。職場でもできることはたくさんありますよ。
QKさん
ちなみに、7つの休養モデルに入っていない「呼吸すること」は、休養に効果がありますか?
片野さん
セルフリラクゼーションのために、日中の呼吸は大事ですね。腹式呼吸の取り入れは特に大切です。横隔膜って体性神経(自分の意思で動かせるもの)と自律神経(自分自身でコントロールできないもの)の二重支配で、2つを同時に動かせる珍しい器官です。横隔膜を動かして、腹式呼吸をすることは、疲労の解消やリラクゼーションにとても効果的です。
QKさん
ありがとうございます!「呼吸に意識を向ける」というと、たとえば、瞑想。なかなか難しくて、実は苦手なんです。
片野さん
瞑想は「造形・創造タイプ」の休養にもなると本に書いていますが、ヨガや瞑想の中での腹式呼吸、自律神経への効果など、間接的な効果も狙っています。瞑想が難しいと感じるなら、目をつぶって好きな場所を思い浮かべたり、楽しかった時のことを考えたりするだけでも心や脳のリフレッシュ、休養につながっています。
QKさん
なるほど!それならぼくにもチャレンジできそうです。
片野さん
休養行動を複合的にたくさんとっていき、パワーを充電する「攻めの休養」で、自分にあった休み方をデザインしてみてください。
片野秀樹 プロフィール写真
プロフィール
一般社団法人日本リカバリー協会 代表理事 株式会社ベネクス 執行役員
片野秀樹
博士(医学)。東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、東海大学医学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は一般財団法人博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)も務める。編著書に『休養学基礎:疲労を防ぐ!健康指導に活かす(メディカ出版)』、著書に『休養学:あなたを疲れから救う(東洋経済新報)』。