みんなが知らない、
休養のあれこれ。
片野先生インタビュー #3
2025.1.13
#インタビュー
#片野秀樹
いろいろな専門家に話を聞きながら、
休憩について研究していくシリーズの第6弾。
今回は「休養学」の第一人者で一般社団法人 日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹先生。長年、疲労と休養について研究し、休養の重要性を伝えている片野さんが正しい休み方を教えてくださいます。
全4回の対談、おたのしみください。
QKさん
片野先生、休養法について、まだまだお聞きしたいことがたくさんあります。先生の『休養学』を読んだら、休養によくない行動に、ぼくがよくやっていたことがたくさん入ってて、目からウロコでした。
たとえば「寝過ぎはよくない」ということ。休養のために睡眠は大事ですよね?
片野さん
休養にとって、もちろん一定の睡眠をとることは大事です。でも、ずっと寝ていれば回復するわけではなく、体を劣化させることもあると知っておきましょう。私は本の中で「あなたに合った睡眠を見つけること」をおすすめしています。
QKさん
どうしたら、自分に合った睡眠が見つかりますか?
片野さん
睡眠時間は長さが重要なのではなく、自分らしいサイクルというものがあります。朝起きて、大体14〜16時間後くらいに「メラトニン」というホルモンが出て睡眠を誘発してくれるようになっています。朝、日光をしっかり浴びるということが、夜、睡眠をしっかりとれる仕組みにもなっているのです。
QKさん
じゃあ、休日の朝は寝ていて、遅く起きるのはだめですよね。
片野さん
休日昼や夕方まで寝ていると「ソーシャルジェットラグ」(社会的時差ボケ)が発生します。これが週末だと、月曜日から時差ボケ状態で会社に行っていることになるのですよ。
QKさん
それは大変。やっぱり休日はごろごろしてちゃダメなんですか?
片野さん
そうですね。休養と活力のバランスをとるために、睡眠の時間以外はしっかり活動することが重要です。日本では休日というと睡眠やごろごろすることのイメージがありますが、海外ではむしろ軽いスポーツをしたり、家族団欒を楽しんだりすることが当たり前です。体を軽微に動かして、血液の循環を良くすることは、早い段階での疲労回復につながります。
QKさん
他にも『休養学』でコーヒーやスイーツにばってんがついていたのが気になりました。これは、なぜですか?
片野さん
コーヒーのカフェイン、甘いもの糖質も、第1回でお伝えした「マスキング効果」が体を疲労させてしまうもとなのです。
QKさん
それぞれが疲労のもとになる仕組み、もっと知りたいです。
片野さん
専門的なお話ですが、私たちの体には傷ついた細胞を修復するATP(アデノシン三リン酸)*というエネルギーがあります。体を動かして、このATPをどんどん使うと、燃えかすが発生します。この燃えかすが入る受容体があるのですがそこに収まると「眠い」「疲れた」という疲労感が出てきます。
カフェインは燃えかすと同じ形をしていて受容体にぴったりはまってしまうんです。すると疲労感に関連する信号が出なくなります。簡単に言うと、これがカフェインで眠気を感じなくなるしくみです。栄養ドリンクもカフェインが主成分のことが多いので、コーヒーと同じ仕組み、一時的に眠気や疲労感を忘れられるのです。
*アデノシン三リン酸・・・私たちの生命活動エネルギーをつくり、細胞や筋肉を動かす媒介物質。
QKさん
知らなかった・・・!疲れがとれた、元気になった「ような気がする」ということなんですね。
片野さん
忙しい時はコーヒーや栄養ドリンクを飲んで、乗り切るときもあります。リフレッシュのために時にいただくことはいいと思いますが、こうしたことを理解して摂るのと知らないで摂るのでは大きな違いがあります。
QKさん
みんなが知らない休養のこと、とても勉強になりました。
プロフィール
一般社団法人日本リカバリー協会 代表理事 株式会社ベネクス 執行役員
片野秀樹
博士(医学)。東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、東海大学医学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は一般財団法人博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)も務める。編著書に『休養学基礎:疲労を防ぐ!健康指導に活かす(メディカ出版)』、著書に『休養学:あなたを疲れから救う(東洋経済新報)』。
片野先生インタビュー
前の記事
次の記事